委員決めの日。

それは僕がヒーローになれる日。

 

 

 

 

僕が僕であるために

 

 

 

 

 

 

 

 

一年前…

 

「残るは会計委員と保健委員だけだ!立候補する者はいないか?」

そんな奴いるはずがない。だって保健委員会は僕の領域なんだから。
皆一様に先生から目をそらし、僕の方をうかがってくる。

言われなくても…どうしても僕は保健委員にならなくてはならない。

 

その少し前…
僕と綾部は、毎年恒例の委員決めについて話をしていた。

「あー、もうすぐ委員決めの日かぁ。また保健委員になるの嫌だなぁ…」

「何言ってるんですか。保健委員じゃない伊作先輩なんて、忍者してない文次郎先輩より最悪ですよ」

「……!!!(ずどーん)」

ぎんぎん-忍者〉不運-保健委員。

こうして僕は保健委員になり続けることを誓った。

 

再び教室。

「本当に誰もいないのかー?」
「(さてどうする…今までは「伊作コール」がかかってから満を持して立候補していたけど…。いや焦らなくても保健委員に立候補する奴なんて…)」

ちなみに「伊作コール」とは、誰も保健委員に立候補しない状態が続いた時、どこからともなく起こる「伊作!伊作!」というコールである。


「俺立候補します」

僕は目を疑った。なぜ文次郎が!?会計委員でぎんぎんしてるんじゃなかったのか!?


「おお、それは助かる」

「ちょっ…ちょっと待って。今まで僕が保健委員だったんだしやっぱり僕が…」

僕は耐え切れず手を挙げた。

「なんだやりたいのか?」
「…うん」
「じゃあなんで先に手を挙げなかったんだよ」
「うっ…」
「それに俺だってもう地獄の会計委員会はもう嫌だ!たとえ不運と言われようが保健委員会の方がまだましだ!」

どうやら前の委員会で何かあったらしい。しかし譲るわけにはいかない。僕と文次郎では…背負っている物の重さが違うのだから!

僕は身を震わせて答えた。
「………何が地獄だ…!これは、これには、僕のアイデンティティが懸かってるんだ!」


見かねた先生が、僕達を止めに入った。
「まぁまぁ二人とも。こうゆう時はじゃんけんで公平に決めろ、な?」


じゃんけん…!

学園では保健委員は不運な者がなるとされている。ならば保健委員を巡ってじゃんけん勝負をすれば神様はどちらを選ぶのか?
前代未聞の勝負にクラス中が色めき立つ。


「残念だけど、不運さでは僕は負けないよ。保健委員は僕がなるに相応しいんだ」
精一杯不敵な笑みを浮かべてみせる。もはや僕にとって不運であることは誇りと化しつつある。

「ふん、運がなけりゃじゃんけんには勝てないぜ」


睨み合う両者。

絶対に、負けられない戦いがそこにはあった…。


 

「それで…どうなったんです?」
「……」

僕は負けた。
ただしそれは僕が不運だったからではなく、相手が「爆弾」を出したからである。
卑怯者と言いたかったが、「手段を選ばないのが忍だバカタレ」と言われるのがオチだったため言わなかった。
しかしその三日後文次郎が「頼むから変わってくれ」と言ってきため、僕は辛うじて自我崩壊を免れたのであった…。


「へぇ。つまり伊作先輩は三日間だけ会計委員だったんですね。その間不運はましでしたか?」
「…その三日間、会計委員全員がぷち事故又はぷち災害に巻き込まれた」

「…………」
「…………」

「…伊作先輩。私は先輩と一緒にいて大丈夫でしょうね?」
「…さぁ?でもまあ」


大丈夫じゃなくても離さないけどね。


 

 

 

 

 

 

 


あとがき

えーと、あんまり伊綾っぽくないですねゴメンナサイ。
うちの伊作は精神状態が悪くなりすぎると不運を人にもうつしてしまうという設定です(どんなんだ)
じゃんけんの「爆弾」って知ってますか?ずる出しの一種で無敵だったと記憶しているのですが…(汗)
小学校とかの時の不人気な委員決めってこんな感じじゃありませんでした?