この話は、「はこにわ」のpepinoさんが描かれた絵から私が勝手にイメージしたものです。
先に、「微熱と呼ぶには」とpepinoさんの素敵絵を見ることをおすすめします。
pepinoさんの素敵絵はこちら。
「先輩、お話したいことが…」
卑怯な口付けを交わした日
先輩の背中にすがりつく様にして僕は切り出す。真正面から話しかけなかったのは、まともに先輩の顔を見て話せる自信が無かったから。
つくづく自分は卑怯で臆病な人間だと実感する。
先輩は何も言わない。何も、言ってくれない。
一言でいい。一言。今更何をとか、お前と話す事などないとか。何でもいいから内心僕は拒絶を望んでいた。
でも
先輩は
「…わかった」
僕を
拒絶しない
…でも、それだけだ。拒絶しない。そこにどれだけの意味と好意があるのだろう。
その答えは多分先輩だけが知っていて。
「…この前のこと、なんですけど」
相変わらず先輩の背中にしがみついたままで言葉を紡ぐ。話し合いと言うにはあまりに失礼なこの体勢で。
「…ああ」
先輩は「この前ではわからない」なんて意地悪はしない。はぐらかしてもくれないのが何故か悲しかった。
「…嫌、でした?」
「…嫌、ではない」
あの日を思い出して胸が熱くなる。先輩も同じなのかもしれないと思い背中から自分の額で熱を探るが、この状態では分からなかった。
「じゃあ」
──僕のことが好きですか?
これを問うために話しかけたというのに、まるで首を絞められた鳥のように喉の奥がつかえた感じがしてうまく言葉にならない。
「…お前のことはすきだ」
「……………………」
「……………………」
「…それだけ、ですか?」
「…それだけだ」
てっきりその後に打ち消しの言葉が入ると思っていた僕は動揺してしまった。
好き、それだけ。聞きようによっては告白と取れるこの言葉はしかし優しい罠を含んでいて。
「…そうですか」
「………」
その背中が震えているような気がして、僕はそっと先輩から離れた。
───その「すき」は優しさですか?
ねぇ、先輩。
卑怯な口付けを交わした日から
僕の心が動かない
あとがき
まず何よりも先にイメージとイラストと萌えをくださったpepinoさんに感謝します(ぺこり)
「微熱と呼ぶには」が中途半端だったかな?と思ったので後日談を書きたいなと思っていたところにpepinoさんの素敵絵に巡り合ってしまったわけですよ!
しかしやはり中途半端。しかも短い(汗)でも自分の気持ち的にはこれで完結です(それでいいのか)
pepinoさんに捧げます。またいつか再開する時がありましたらサイトの端っこにでも飾ってくださいませ(笑)