神隠し
きり丸が消えた。
いつものように三人でお使いに行く途中、三人で山に登っていた時だった。
最初はまた山菜でも採りにいったんだよ、としんべヱと笑いながら捜した。
でも見つからない。
どんなに呼んでも見つからない。
先生達が捜しても見つからない。
見つからない。
三日後、きり丸は学園に帰ってきた。背中に山菜が入った籠を背負って。
「きり丸!」
「きりまるぅ〜…」
「乱太郎、しんべヱ!……ごめんな」
「…ばか」
先生達への言い訳は「山菜採りに夢中になって迷子になり、帰れなくなった」だった。
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「夢を…見たんだ」
「え?」
先生達のお小言も終わったその日の夜、きり丸はぽつりと言った。
「急にすごい霧にあって…。その霧が晴れたら…そこに俺の村があった。」
「え?え?」
突然のきり丸の話に私は追いつけなかった。。
だってきり丸の村は──。
「だぁから、夢の話だって。俺はそこで家族と笑って暮らした。昔みたいに」
「……それで?」
「何日か経って、言われたんだ。「もう帰りなさい」って。俺は嫌だって言った。夢だろうが狐の幻だろうが、どうでもよかったんだ」
きり丸の声はいつものように淡々としていて、そこから感情を読み取ることはできない。
ただ本当に楽しかったのだと、それだけが私にもわかった。
「そしたら、「今のあなたに好きな人や大切な人はいるの?もしいるのなら…帰りなさい」…って。それで気がついたら山で倒れてたんだ」
私は何も言わなかった。
「あーあ、変な夢だったなぁ!」
「…きり丸」
「ん?」
「私は…きり丸のこと好きだよ」
「……奇遇だな、俺もだ」
私だけじゃないよ。しんべヱも、先生も、は組のみんなも。みんなきり丸が好きだよ。
ただその中できり丸の「好きな人や大切な人」に一番に浮かぶ人であれたら────
あとがき
だいぶ昔に書いたきり乱…のつもり。もう一度見て乱きりっぽいかもとも思いました。
少しファンタジーっぽくしてみたかったんです。