二重人格


 

 

 

 

冷静な奴だ、と人から言われる。実際にそうだと思うし、そうでなければ私ではないとも思う。
なら。

「仙蔵」

今、同級生に組み敷かれている私はなんなのだ。
そしてそれをさも軽々とやってのけるこの胡散臭い同級生は。

「ねえ…何考えてるの?」
「お前のことじゃないのは確かだ」
「…可愛くないなぁ」

…気にくわない。こんな奴に思考を占拠されている自分が。

「仙蔵ってさ…僕のこと好き?」
「…嫌い…ではない」
「いい加減…好きって認めてくれないかなぁ?」

言いながら伊作はゆっくりと仙蔵の体に手を回す。

「断…るっ」
「じゃあいつになったら認めてくれるの?」

わかっている。本当はもうとっくに、認めている。
伊作が好きだと。
ただ、それを口に出してやらないだけ。その言葉が、大きすぎる伊作の存在が、自分を弱くしてしまいそうだから。

だからその代わりに仙蔵は言う。

「…もしも私が死に際に、お前のことを想ったら」
「え?」
「…その時は、認めてやる…」
「…嫌なこと言うなぁ…」
「……」

 

今何となくわかった。
こいつといる時の私は、私でないんだ、と。



 

 

 


あとがき

…今まで書いた中で一番あれな話(滝汗)な、なんかもういろいろごめんなさい(何)
と、とりあえずうちの伊仙はこんな感じです。仙蔵は必死で意地を張るんです。