Search me. Search out.

 

 

 

 

 

「(あれはまさか…不破か?)」

人々に話を聞いている雷蔵を、中在家長次は遠くの物陰から見ていた。
なぜ不破がここに、と考えたが必死で情報を求める雷蔵の姿を見て長次はすぐに状況を理解した。
おそらく不破は、どこかで偶然に鉢屋三郎が死んだという情報を知ってしまったのだろう。そしてここまで、鉢屋を探しに来た。
そしておそらく今、鉢屋が数日前までここにいたということを知ったはずだ。

「(鉢屋…誤算だったな)」

走り出した雷蔵を見届けて、長次もまた別の方向へと音も立てず足を進めた。

 

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僕は、先輩と一緒にお茶を飲んでいた。

「へええ。それは大変だったねえ」
「いえ、そんな。あの…ところで先輩、その顔がちょっと腫れてるのどうしたんですか?」
「あはは。ちょっといつもの不運で」
「…そうですか」

突然訪ねてきた僕を、先輩は快く迎えてくれた。
善法寺先輩は卒業した後小さな診療所を開き、その傍ら忍の仕事や情報収集をしている。
そしてここは、多くの卒業生達が集まるところでもあるのだ。

「それで…あの…三郎について何か知ってませんか?数日前までこの辺りにいたらしいんですけど」
「知ってるも何も…診たよ」
「本当ですか!?」
「うん。一週間程前にひどい怪我でやってきて…あ、いや、命には別状なかったんだけどね」

怪我、と聞いて顔色を変えた僕を見て先輩は慌てて付け加えた。そんなにひどい顔をしていたのだろうか。

「そ、それで三郎は今どこにいるんですか?」

それを聞くと先輩はうつむいて答えた。

「………。…それが…わからないんだ…ごめん」
「え…」
「手当てをした後…気づいたら抜け出されてたんだ。全く…患者をみすみす逃がすなんて万年保健委員の名がすたるよ…」
「そんな…」

今までのことから考えて、三郎は何かに追われている可能性が高い。手当てを受けたとはいえ、手負いのまま逃げるなんて危険すぎる。

「そうしたらね、その後に変なお客さんがいらっしゃって」
「え?」

先輩の声色が急に変わった気がして、僕は思考から引き戻された。

「集団でいきなり勝手に上がりこんできて、診療所の中荒らして帰っていくんだもん。参ったよ」
「それって…」

間違いない。そいつらは三郎を追ってきたんだ。そして三郎が診療所を抜け出したのは、先輩を巻き込まないために違いない。

「あ…じゃあ先輩その怪我…」
「大したことないよ」

僕の中で静かに怒りがこみ上げる。一体そいつらは何者なんだろう。どうしてそこまでして三郎を…。
三郎の消息がわかっているのは数日前まで。今はどうしているんだろう。怪我は平気だろうか。無事なんだろうか。
僕がぐるぐると考えていたその時。どすどすどす、という荒っぽい足音がした。
まさか追っ手が?そう思い伊作先輩に目をやる。しかし先輩は落ち着いた様子で答えた。

「大丈夫。これは誰かさんが最高に機嫌の悪い時の足音……かな?仙蔵」
「………………」
「立花先輩!」
「………………不破…来ていたのか」

先輩は僕に一瞥をくれてそう呟くように言った。でもどこか様子がおかしい。

「仙蔵…どうしたの?何があった?」
「……何もない。…遅すぎた」

そう言って立花先輩は僕の前に腰を下ろした。先輩にしては珍しくどこか狼狽しているようだった。
しかしすぐ気を取り直すようにため息をつき、僕の方をまっすぐに向いて聞いた。

「……鉢屋を探しにきたんだな?」

見据える、というより睨み付けるに近いような目で先輩が僕を見たので僕は思わず緊張してしまった。

「あ、はい。そうです」
「よく聞け。鉢屋は生きている」
「ほ…ほんとですか…」

生きている。その言葉だけで、体が底から温まるような気がした。

 

「だがじきに死ぬ」

 

え…?せんぱい、今、なん、て──

 

「お前が望めば、会うことはできる」

うそだ。

「だが今お前が行けば」

さぶろう。

「鉢屋が一番守りたかったものを壊すことになるかもしれん」

どうして。

 

「それでも会いたいか、不破」

 

さぶろう。

 

 

 

 

 

 

 

 


あとがき

なんか、いろいろごめんなさい…。こんなにシリアスな話書いたの初めてです。
次回からは三郎サイドの話の予定です。
結末が数種類思い浮かぶので思い切ってマルチエンディングとか考えてるんですがどうでしょう…(悩)