知ってしまったこと

 

 

 

 

「おい仙蔵!開けろよ!」
戸は開かない。
自分の記憶が間違っていなければここは一応自分の部屋であるはずだが。

「誰か来たみたいだよ」

聞き覚えのある声だ。伊作が来ているのか。ならちょうどいい。


「おい伊作!そこに居るんだったら開けろよ!ついでに怪我の手当も…」

そこまで言った瞬間、物凄い勢いで戸が開き、

「開けたら殺す」

と仙蔵がたった一言。
その長い髪の毛が逆立っているような錯覚をおこす程の殺気だった。

「お、おい…」

理由を聞く間もなく再び戸は閉められた。

その後、納得のいかない文次郎は命知らずにも部屋の盗聴を試みた─────

 

そこで知ってしまったことは。

 

 

「落ち着け!仙蔵!落ち着いてくれ!」
仙蔵は黙ったまま次々と焙烙火矢を取り出した。
「…頼む…」

「……お前だけには」
「あ?」

「………お前だけには、見られたくなかった…」
「……悪い」

 

 

次の日。保健室にて。

「…文次郎、昨日は楽しかった?」
「は…?」

文次郎の受難は、まだ始まったばかりである。

 

 

 


あとがき

伊仙を書いてると、なんだか仙蔵がわからなくなってしまいそうな時があるんです…。
そんな時は、文次郎でレスキュー!たちまち元の仙ちゃんに!(笑)
文次郎は、仙蔵にとって一番「らしく」いられる相手。伊作は一番「らしく」いられない相手。厳禁ブラザーズ除く(笑)