スノー・ホワイト
「ただいま」
声をかけられた綾部はゆっくりと振り向いた。
柔らかな髪がその動きと風に伴って舞う。
よく知っているはずのこの声は、何故かいつだって聞き慣れないのだ。
「どうしたの喜八郎くん。また僕のこと忘れちゃった?」
「あー…?」
「…実習で一週間帰ってこない、って言ったよね?」
確かに伊作は綾部にそう告げていた。ただ、あえて言うならこの二人が顔を合わせるのは実は十日ぶりだ。
「…さて。よく思い出せませんが」
「…ほんとに?」
「はい」
「…悪い子だね」
「はい」
言葉を失った二人にしばし見つめ合うだけの沈黙が訪れる。
先に口を開いたのは伊作だった。
「…そっか。…そんなに思い出せないなら、僕が思い出させてあげるよ」
自身の両肩を掴んだ伊作の顔が近付くのを感じ、喜八郎は背伸びの準備をした。
天へと向かって。
「…遅れてごめんね」
「…嘘つきうんこ男」
あとがき
はい、伊綾第二弾でした。やはりこの二人は甘い…。でも最後にうんことか言うなよ綾部!
ちなみに、タイトルの意味わかりましたか?スノー・ホワイトは白雪姫…キスで目覚めるんです(恥)