夢語り。
変な夢を見た。
実は細かいところは覚えていない。
ぼんやりと浮かぶのは雷蔵の顔と、選択を迫る自分。
そしてその夢はやけに中途半端なところで終わっていた。
「雷蔵」
授業の終わった後、教室で二人。
「何?」
「変な夢を見た」
「どんな?」
三郎は珍しく、少しためらうような様子を見せてから話し始めた。
「……二人だけで森の中にいて、俺の左胸には刀が刺さってる。刀を抜くとすぐに死ぬけど、抜かなくてもそのうち死んでしまう」
雷蔵は一瞬、ぽかんとした表情を見せたが、すぐに聞き返した。
「………それで?」
「……もしも…「最期の瞬間はお前が決めてくれ」って言われたら、お前はどうする?」
聞きながら、我ながら無意味な質問だと思う。
目の前の一番大切な人は、人一倍迷いやすくて優しいから。きっと答えられない。
「抜くよ」
答える彼の声が、あまりにまっすぐだったから。
「……迷わないのか?」
「三郎がそうしたいって言うのなら、僕は迷わないよ」
「………」
「でも、その後返した刀で自分を刺してしまうかもしれないけどね」
「………」
「あ、でもそうすると同じ顔の死体が二つになって、最初に見つけた人はびっくりするだろうなあ」
そう言ってくすくすと笑う。
それはそれは屈託無く。
「……違いないな」
「…雷蔵」
「ん?」
「変なこと聞いて悪かった…。それと、ありがとう」
「どういたしまして」
あとがき
この話はシリアスなのか、ほのぼのなのか。やっぱりシリアスかな。
うちの雷蔵さんははっちのことではあんまり迷わない設定です。