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「卒業式に出れない?」
「…ああ、ごめんな雷蔵」
「ううん、仕方ないよ任務じゃ。……がんばってね」
「ああ…ありがとう」

本当は残念だったけれど、僕はそう答えた。
就職先で早速任務があったり、面接の日が重なったりして卒業式を休まなければならない生徒というのは毎年何人かはいる。
ただその何人かに、三郎が入るとは思っていなかった。
お互い最近は学園にいないことが多かったため、こうして二人部屋で顔を合わせるのも本当に久しぶりだった。
三郎が卒業式に来ないとなると…もう在学中に会うのはこれが多分最後。
そう思って三郎を見ると、三郎はうつむいたまま何も言わず固まっていた。

「……三郎…?」
「…………っ……」

声を掛けた次の瞬間、正面から強く抱きすくめられていた。

「……三郎…」
「……ああごめん雷蔵、つい」
「びっくりしたなあ、もう」
「…いや、もう前みたいに雷蔵に会えないと思ったら寂しくなって」
「はは、三郎は意外に寂しがりやだからなあ」
「う………」

三郎に抱きしめられたまま、僕は笑った。

「…また会えるよ。ううん、きっと会いに行くから」

 

 

会いに行くから。

 

 

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「…夢…か…」

ゆっくりと息をつく。
人通りの多い道を避けて山道を進んでいたら、夜になって霧が出てきてしまった。
本当は一刻も早く進みたかったが、こういう時無闇に動くと命取りになる。僕は仮眠をとることにした。

「……よし」

霧も昨夜に比べれば薄くなってきている。追っ手の気配もない。

進もう。

 

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「き、貴様っ…何者だ?」

いかにも柄の悪そうな大男が少年の足元に伏していた。

「ああ俺?…えーっと…正義の味方?」
「ふざけるなっ!この俺を誰だと思って…」

男の言葉は目前に下ろされた刀によって最後まで続かなかった。
一方の髪の多い少年は刀を納めずに言う。

「ま、正義の味方っていうのは冗談だけど、こっちも真剣なんだ。安心しろ、殺しはしないから。…その代わり覚えておいてくれ。鉢屋三郎だ」
「な、何だと…?」
「俺の名前だよ。あ、それと」

去ろうと男に背を向けた少年は、振り返って満面の笑みを浮かべ言った。

「もしまたいつか顔を合わせることがあれば、その時は容赦しないからそのつもりで」

男は青ざめた。

 

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「ふう…」

どのぐらい歩いただろう。やっとのことで目的の城と比較的近い町に辿り着いた。
ここ、確か善法寺先輩の診療所が近くにあったはずだ。とりあえずそこへ行ってみようか…。
と考え事をしながら歩いていると、いきなり大声で指をさされた。

「う…あ…あああっ!!お前はっ!!」
「あ、貴方様はっ!」

一応周りをきょろきょろと見回してみる。がどうしても僕のことらしい。それにしても…ど、どこかで聞いたような言葉だぞ…。

「頼む、あの時は俺が悪かった!命だけは助けてくれ!!この通りだ!」
「まあまあよくぞいらっしゃいました。大したもてなしもできませんが…」
「このドロボウ猫!!よくもあたしの前に出てこれたわね!」
「あぁ〜っ、顔が変わるお兄ちゃんだ!また「しんべえ」やって見せて!」

…………。ちょっ…ちょっと待って。ひとつ変なの混じってなかったかな?
とそれはさておき、この人達は三郎のことを知ってる。何か聞き出さなくては!

「あ、ああ…うん。その…つかぬことをお聞きしますが、ぼ…俺は、どれぐらい前にこの町にいましたか?」

僕はその辺で頭を下げたままの柄の悪そうな男に聞いてみた。変装してるわけでもないのに人のふり…やりにくいなあ。

「へ、へえ…確か数日前まではいたと思いますが!」

……数日前!?潮江先輩から聞いた城が落ちたという日は…一週間以上前だ!

「そ、それは確かなんですね!?」
「はっ、はいぃ!」
「い…生きてる…?」

しばし我を忘れ呆然とする。やっぱり三郎は…!いや、それより前に、もう一つ確認しておかなければならない。
僕は姿勢を低くして、寄ってきた子供達に問いかけた。

「ボ、ボク達、お兄ちゃんの名前覚えてるかな?」

子供達は当然!というように誇らしげに首を縦に振る。そしてせーの、で叫んだ。

 

「…っ…ありがとう」

僕は走り出した。善法寺先輩なら何か知っているはずだ。情報の確認もしたい。

「くく…それにしても…」

思わず笑みがこぼれる。

 

 

 

さぶろうお兄ちゃん、か。意外に似合ってるよ、三郎。

 

 

 

 


 

 


あとがき

なんと言いますか、次に連載を考えることがあれば何も考えずに始めるのはやめよう思いました…。
徐々に真実が明らかになっていく話に憧れてたんですがね(汗)。
そして鉢雷なのに二人が絡まないので回想入れたら…なんか恥ずかしいことに…。
ところで、ドロボウ猫と言われた三郎は何をしたんでしょう?(笑)ずっとシリアスできてると突発でギャグ入れたくなります。